少し前までは通夜に喪服を着用していくと、亡くなることを予想していたと思われるため平服で列席するのことがマナーとされていました。しかし最近では亡くなった当日に通夜を行うことが減ってきたこともあり、喪服を着て列席することが一般的に広がってきています。
では、夏の暑い時期にはどんな服装で参列すればいいのでしょうか。
本記事では夏場の葬儀で着るべき服装を男性、女性、子供別にご紹介します。
喪服の格式
そもそも喪服はただ黒い服を着ればよいといいわけではなく、きちんとマナーがあります。
喪服の格式は正喪服、準喪服、略喪服の3段階になっており、弔事の場面や着る人の立場によって違ってきます。遺族よりも格式の高い喪服を着用してはいけません。男女の格式は次の通りです。
男性 | 女性 | 着用シーン | |
正喪服 | 和装、モーニングコート | 和装、ブラックフォーマル(ワンピース、アンサンブル) | お通夜 お葬式 三回忌までの法事 |
準喪服 | ブラックスーツ | ブラックフォーマル(ワンピース、アンサンブル、スーツ) | お通夜 お葬式 法事 |
略喪服 | 黒、紺、グレーなどのダークスーツ | 黒、紺、グレーなどの地味な色のワンピース、アンサンブル、スーツ | 喪主側から「平服」を指定された場合 駆けつけたお通夜 三回忌以降の法事 |
格式のルールを踏まえて、夏場の葬儀で避けたい身だしなみや着るべき服をご紹介していきます。
夏場の葬儀で避けるべき身だしなみ
遺族に失礼がないように、ルールを守った身だしなみで参列するのが礼儀です。夏で暑いからと言って軽装で行っていいわけではありません。葬儀は肌の露出を控えるのが原則です。
そこで、夏場の葬儀で避けるべき身だしなみとはどういったものなのか、詳しくご紹介します。
男性の避けるべき身だしなみ
実際に、男性の避けるべき身だしなみをチェックしていきます。
半袖は?
ジャケットを着用することが前提になっていますので、半袖のYシャツでも問題はありませんが、白無地のYシャツ以外はNGです。
白シャツでもシワ加工や光沢のあるものはダメです。
カラーシャツや襟や全体に模様のあるYシャツなどはマナー違反です。ボタンや縫い付けている糸も白が基本です。また、夏の半袖シャツは薄い生地が多く、透けてしまいますので、ベージュのインナーを着用するようにします。
柄や黒などのタンクトップやTシャツ、またはインナーを着用しないという行為はマナー違反です。しかし、本来は喪服の袖口からカッターシャツが見えるのがマナーです。
ジャケットは?
夏でもスーツのジャケットは着用するのがマナーです。暑いからと言って葬儀中に脱がないように気をつけましょう。
夏用に通気性の良い背抜きのジャケットを着用するなど工夫して参列しましょう。
ネクタイは?
クールビスの期間中でもノーネクタイは非常識です。
また派手な色やストライプなどの柄、織柄、刺繍が入ったネクタイはNGです。そして、葬儀ではネクタイの結び目の下にくぼみができる「ディンプル」は作ってはいけません。
くぼみができればネクタイが立体的になって華やかにみえてしまうため、葬儀の場には不向きとされています。ネクタイはプレーンノットで結ぶことをおすすめします。ネクタイピンは光物に分類されますので外すようにします。
女性の避けるべき身だしなみ
女性の避けるべき身だしなみを確認していきましょう。
ジャケットは?
女性でも葬儀でジャケット着用は必須です。光沢のある素材や透ける素材はもちろん、柄物はNGです。織り柄も避けましょう。長袖や7分袖のワンピースを着用する場合はジャケットは不要です。
ワンピースの袖の長さは?
肌の露出を控えるのがマナーですが、ジャケットを羽織るのであれば、半袖や5分袖でも問題ありません。ジャケットを着用しない場合は、7分袖までならOKです。
インナーは?
スーツのインナーも黒で統一します。派手な色やアニマル柄などはNGです。白も目立つので避けた方が無難です。
スカートやパンツの種類は?
スリムパンツは座ったりお辞儀をしたりすると下着のラインが目立つので不向きです。
マーメイドラインのスカートもヒップが協調されたり、座った時に下着のラインが見えたりするので避けた方が良いです。タイトスカートも座ると丈が上がるので丈の長さに注意が必要です。
子供が避けたい身だしなみ
一般的に子供は喪服を着用しなくても問題はありませんが、葬儀で浮かないような服装を心がけることが大切です。
派手な柄・色、キャラクターはNG
派手な柄物や鮮やかな色のもののほか、キャラクターものもNGです。またサテンなどの光沢、レースやリボンなどの華美な服装は避けます。学生は制服を着用するのが基本です。
【男性の場合】夏場の葬儀で着るべき服装
ただ黒のスーツを着ていけばよいというわけではありません。実は男性にも色々とマナーがあります。夏の葬儀できるべき男性の服装とは次の通りです。
ブラックフォーマルのスーツ
葬儀は基本的に光沢のない漆黒色のブラックフォーマルで参列します。ブラックフォーマルならシングルでもダブルでもどちらでもOKで、裾はシングルが好ましいです。一般弔問客として参列する場合はブラックスーツで問題ありません。
白シャツ
喪服に合わせるシャツは、白無地の平織りした布地のシャツが基本です。襟型は、レギュラーカラーやワイドカラーのようなシンプルなデザインがおすすめです。ボタンや縫い付けている糸も白色のものを選びましょう。
黒のネクタイ
黒色で光沢のない布製が好ましいです。目立たなければストライプなどのデザインが入っていても許容範囲です。結び方はプレーンノットが好ましいです。ネクタイピンは付けないのがマナーです。
髪型
清潔感が感じられる髪型がベストです。前髪は顔にかかりすぎない程度に適度な長さが好ましく、ワックスやジェルなどは使いすぎないように気を付けましょう。
ミディアムヘアやロングヘアの場合は後ろで結ぶようにします。長い髪にパーマをかけている場合も黒やこげ茶などのヘアゴムでまとめます。金髪や明るい色の場合は、スプレーなどで一時的に黒髪にした方がよいでしょう。
【女性の場合】夏場の葬儀で着るべき服装
葬儀の場では着飾ったり美しく見せたりする必要はありません。その場にふさわしい服装で参列することが大切です。夏の葬儀で女性が着るべき服装は次の通りです。
スーツやワンピース
女性のジャケットは、ノーカラージャケットやフリルジャケット、ロング丈やショート丈など種類が豊富で、合掌したときに手首が隠れるように普通のジャケットよりも袖は長めになっているのが特徴です。
ご焼香などお辞儀をした時に、ジャケットがずりあがってインナーが見えるとだらしない感じになりますので、短すぎない丈を選ぶことをおすすめします。
スーツのインナーも黒で統一するのが基本です。スカート丈は、椅子に座ったり、正座したりしたときにひざが隠れるような長さの丈を選びます。素材はシルクか化繊で、生地感の目立たない平織りが好ましいです。
タイトスカートよりもフレアスカートの方が動きやすいのでおすすめです。パンツも細身よりはゆったりしたシルエットの方が動きやすく、下着のラインも目立ちにくいです。
ヘアスタイル&メイク
ヘアスタイルやメイクは控えに。高めのアップスタイルは華やか印象になるので相応しくありません
。長い髪を束ねたり結んだりする場合は低い位置になるようにします。ショートやボブの方は華美なアレンジはしないように気をつけましょう。寝ぐせなどがついていない程度に整えるくらいのスタイリングが好ましいです。
アクセサリー
アクセサリーは結婚指輪以外は外すのが基本ですが、一連のパールのネックレスは許容範囲です。イヤリングは一粒パールでもネックレスとセットでつけてしまうと華やかになってしまうので避けた方が無難です。
バッグ
刺繍や派手な装飾のないシンプルなデザインで、光沢のない布製の黒を合わせるのが一般的です。金色の留め具やエナメルなどの光沢のある素材はNGです。荷物が多いときは黒色のサブバッグを持って行っても問題ありません。
ネイル
ベージュ系の落ち着いたネイルなら付けたままでもOKです。
ストーンがついていたり、華やかな色合いのネイルは落として参列するのがマナーです。しかし、ネイルアートなど簡単に落とせない場合もあります。そういうときは黒い手袋で指先を隠すという方法がありますが、お焼香や食事では外すようにしましょう。
授乳対策
通常の喪服だと授乳がしづらいですが、スムーズに授乳できるようにファスナーが胸のあたりまである前開きのワンピースなど授乳用の喪服がデパートやショッピングモール、ネットショップなどで販売されています。
しまむらですと1万円以下で前開きファスナー付きのワンピースとジャケットのセットが売っていて、ジャケットを羽織れば普通の喪服と変わらないと評判です。レンタルですとだいたい4,800~7,800円で借りることができます。
時間がなくて買えなかった(レンタルできなかった)場合は、大き目のケープで対応しましょう。
【子供の場合】夏場の葬儀で着るべき服装
子供は喪服や礼服で参列しなくても、基本のマナーを守っていれば問題はありません。
何を着せたらいいか迷うという方やカジュアルなものしか持っていないという方は子供用のブラックフォーマル(喪服)をレンタルするという方法もあります。
男児
基本的には黒のジャケット・パンツに、白いシャツ、無地のネクタイになります。
ポケットチーフがついていたら外します。黒以外では一般的にはダークグレーや濃紺などの地味な色を使ったフォーマルな格好をしていけば問題ありませんが、バックルの大きなベルトなど派手なベルトは避けた方が良いです。
ワンポイントの柄がある場合はベストを着用して隠すという方法もあります。
女児
黒や濃紺などの無地のワンピースのほか、白いブラウス+黒・紺・グレーのジャケット+スカートで大丈夫です。
ボーダーやストライプ、チェック柄は許容範囲になります。髪が長い場合は束ねます。その際、ヘアピンやゴムなども黒色のシンプルなものを選びましょう。
乳児
新生児や乳児は黒でなくても、ベージュや淡い水色など落ち着いた色であれば基本的に何でもOKです。
ベビーカーや抱っこ紐も派手にならないように喪服に合わせて地味目のもので参列しましょう。ミルクやおむつなどをいれる鞄も同様です。必ずしも黒でなければダメというわけではありませんが、なるべく地味な色合いのものにすることをおすすめします。
学生
幼稚園や小・中・高校の制服があれば、正装は制服になります。
ネクタイやリボンは多少明るい色でも問題はありませんがあまりにも明るい色や鮮やかな色だった場合は外した方が無難です。ベレー帽や学生帽などの帽子は着用する必要はありません。
職場から駆け付けるときは?
仕事終わりに葬儀や通夜に駆け付けるという方は、夏場は軽装で出勤されていることが多いので色々と注意は必要です。
では、どのような点に注意すればよいのか、男性・女性それぞれまとめました。
男性の場合
夏場はクールビスでノージャケット・ノーネクタイの方も多いと思いますが、基本的には黒を基調としたスーツか濃紺、ダークグレーのスーツで参列します。
この日ばかりはジャケットを忘れずに会社に持っていきましょう。
ネクタイは光沢のない黒ネクタイを着用します。ネクタイや靴下は、コンビニや100円ショップでも売っていますので、締めかえたり、履き替えたりして参列しましょう。
女性の場合
アクセサリーは外し、メイクは控えめにして参列します。
長い髪は黒色のヘアゴムやヘアピンでまとめます。服装は、体のラインが目立たないシルエットのパンツスーツやワンピースなら問題はないです。色は黒はもちろん、グレーや濃紺など地味な色であればOKです。
インナーはベーシックなものが好ましいですが、ストライプや水玉など目立たないような柄であれば許容範囲です。
ただし、ノースリーブはNGですので、ジャケットやカーディガンを羽織るように注意しましょう。スリットスカートや胸元の開いたものもマナー違反になりますので気をつけましょう。
喪服に着替えるのは難しいという方は多いと思いますが、最低限のマナーを守りましょう。