「所得・収入」の違いと使い分けをわかりやすく解説

「所得」と「収入」は、どちらも「お金が自分の所有になること」「自分の所有になったお金」を表す言葉です。同じような意味を持つ「所得」と「収入」ですが、意味にはちょっとした違いがあります。

また社会制度上では大きな違いがあるので、2つの違いを知っておくと役に立知ます。そこで今回は、「所得」と「収入」それぞれの意味や違い、使い分けについてご紹介します。

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「所得」「収入」の意味

どちらも「お金が自分の所有になる」という意味がある「所得」と「収入」。2つの言葉にはどのような共通点と違いがあるのでしょうか。

国語辞典で意味を調べると、それぞれ以下のようになります。
しょ‐とく【所得】
①その身に得ること。また、得たもの。
②一定期間に、個人・法人が勤労・事業・資産などによって得た収入からそれを得るのに要した経費を控除した残りの純収入。
しゅう‐にゅう【収入】
金銭や物品を他から収め入れて自分の所有とすること。また、その金品。

こうして比べると「収入」は、「金品が自分の所有になる」という意味だけを持つ言葉といえます。

対して「所得」は、「金品でない何か」を得る時にも使われてきた言葉。また「所得」が社会制度上、使われる場合は、手元に入ってきたお金「収入」から経費をさし引いた分を表します。

「所得」「収入」の違い

「所得」は、能力などを身につけた時にも使われる言葉

今はもっぱらお金関係の話で使われる「所得」ですが、時代を遡れば、人が「お金でない何か」を得た時にも使われてきた言葉です。最近はそういった使い方をなかなか見かけませんが、過去の文献を見ると、人に特性や能力が身についた時に「所得」という言葉を使われています。現代の私たちが、使う言葉なら「会得」や「習得」が近い感じでしょうか。

例:「其落付(そのおちつき)を品性と教育からのみ来た所得とは見傚(な)し得なかった」〈夏目漱石・彼岸過迄〉

現代では「所得」は社会制度上使われることが多い言葉

本来は広い意味を使われていた「所得」ですが、現代で使われるのは、ほとんどがお金に関する場面です。税務や社会保障など社会制度上で使われる場合、「所得」は入ってきた金品「収入」から「経費」を差し引いた分。

例えばリンゴを売って、100円が自分の「収入」になるとします。そこからリンゴの仕入れなどにかかる「経費」50円を引いた分が「所得」です。純粋に自分が儲かった分が「所得」となります。

ですが、サラリーマンの場合ははっきりとした経費はないので、給料やボーナスの全部が「所得」と考えられています。ですから「所得」=「給料」という意味で使われることも多いようです。

「収入」は「金品が入ること」だけを表す言葉

「収入」という言葉は、「所得」のようにお金以外の意味はなく、「金品が手元に入ること」「手元に入った金品」のみを表します。

また「所得」のような決まりごとはなく、単純に入ってきた金品全部を表す言葉。

決まりごとがないので、日常会話で「お金の稼ぎ」について話す時は、シンプルに「収入」が使われることが多いようです。例えば、噂話のレベルでは「あそこの旦那さんは所得が多い」とは言わずに、「あそこの旦那さんは収入が多い」と言いますね。

どちらかというと「収入」の方が、ざっくりとしたイメージで使われています。

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「所得」「収入」の使い分けと例文

どちらも「お金が自分の所有になること」を表す言葉「所得」と「収入」。実際にはどのように使い分けられているのでしょうか。例文を交えて考えていきます。

「所得」が使われていたのは、何かを身につけた時

「収入」と違い、金品だけでなく「抽象的な何か」が身についた時も使われてきた「所得」。

とくに何らかの努力や理由による結果、それを習得できた場合に使われることが多いです。

「所得」の例文

国語辞典の例文によくあげられるのは、今昔物語集の次の一説。
例:「いかにいはんや人として説の如く修行せむ所得の功徳をや」今昔物語集14

現代の私たちが使うとしたら、以下のような感じになるのではないでしょうか。
例:「小さい時からピアノを習っていたら、絶対音感を所得できた」

「所得」が使われる多くは、社会制度に関する時

「所得」は社会制度に関する場合に使われることが多い言葉ですが、たんに「サラリーマンの給料」という意味で使う場合もあります。

「所得」の例文

社会制度に関係して使われる場合
例:所得税は個人の収入に課せられるのではなく、個人の所得に対して課せられる租税です。
例:児童手当は前年度の所得で判定されます。

「サラリーマンの給料」という意味で使われる場合
例:あの会社の部長なら高所得に違いない。

「収入」が使われるのは、入ってくるお金全部を表す時

「収入」には、「所得」のような決まりごとはありません。たんに「手元に入ってくるお金」を表します。また「所得」と同じように「サラリーマンの給料」という意味で使われる場合も多いです。

さらに社会制度上使われる時でも、手元に入ってくるお金全部を表します。

「収入」の例文

日常会話で使われる場合
例:安定した収入を得る。
例:高収入の人と結婚したい。

社会制度上使われる場合
例:収入から必要経費を引いて残った額が、所得です。

「所得」「収入」のまとめ

今回は、「所得」と「収入」の意味や違い、使い分けについて詳しく紹介してきました。

日常会話で使うレベルなら、同じ意味で使う「所得」と「収入」ですが、深く掘り下げると違った意味が見えてきました。社会制度上では、2つの言葉は大きく意味が違ってきますので、違いを頭に入れて置くと、制度利用の時に混乱せずに済みます。

また「所得」は、昔から「会得」や「習得」に似た意味で使われてきました。さりげなく使ってみて、周りの反応を見てみるのも面白いかもしれないですね。

参考:大辞泉

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